『地下鉄のヴァイオリン弾き(ヴァイオリニストO・A子 に)』
モノ・グラムの四角いバッグ お金もたくさん持ってそうな女の人が
通路にしゃがみ込んで、ヴァイオリンに聴き入っていた
細い白人の男は黒いスーツ 透き通ってしまいそうな蒼白い顔で
繊細に微笑んで、次の曲をはじめる
おしゃれなキリンのための長い長いマフラー、体に巻きつけて
ただ冷めてゆくバスタブのなか、沈んで沈んでいた
*救われない、報われない、麗しき魂たちのために
地下鉄の、ヴァイオリン弾き 今宵も、奏でてやまない
もう進めない、けど戻れない、けがれなき魂たちのために
地下鉄の、ヴァイオリン弾き
**彼は少しだけ 天使になれるよ
目を閉じてる間だけ、彼女の天使になれる
音楽なんてまぼろしなのに なぜ強い力を持つの?
それは、人のなかにもまぼろしが住んでいて、
そのすがたは音楽という鏡にだけ、きっと映るんだ
それぞれの胸のまぼろし それをぴたりと言い当てるひとつの曲
*repeat
**repeat
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