1.

      『 始原愛 〜PHILOARCHAE〜 』



あたしがかれとつきあういじょう

からだをかわすことは つうかぎれいでしょうときみはいうけど

感情的に走り出した僕らは 光の速度になって

時間は過去へと進んでゆく。



君がいつか幼かったように、歴史が幼かったころ

活火山を見上げて 抱き合っていた

胸に余る愛しさを 獣の叫びで伝えるけれど

なぜだろうその声は日に日に細くなってゆく



夜が明ければ、裸で暮らすことさえ もうできなくなりそうで

ぬくもりはどこへ逃げる? 闇を探ってもつかめないのか?

地球を産んだ君の子宮を 忘れてぼくは氷河の旅人になった。





 君が生まれ育った街 週末には歩行者天国

 賑わう中央通 君が覚えてる最初の記憶に、どこまでもまっすぐ続く―



道を歩け、迷いの中で、幼き日の君の声を聴くんだよ

フィロアルケー、涙こぼれ、愛ってなにって生まれて初めて想った日を

忘れないでよ、ねぇその日はさぁ、この街は何色に見えていた?





 マンガのキテレツが笛を吹いて、人ごみが蒸発した街で君は彼と会う

 ひたすらまっすぐな大通り 手をつなぎ歩き出すのか

 背を向け永遠の別れを選ぶのか

 狭い雑居ビルの屋上から ぼくは静かに見守る

生まれて初めて覚えた歌をうたって。





君が生まれ育ち、今も暮らす、まるでアルバムのような街を

フィロアルケー、迷い歩き、愛ってなにって何千回考えていた日々が

迷いを消すだろう、口をつく言葉は、



街が知ってる、記憶してる、幼き日の君の声が答えだろう

フィロアルケー、恋に性に目覚め、愛ってなにって何千回考えた場所から

また歩きだす、君に幸あれ、からっぽの街の空は、青く―、

青く―、まだ獣だった日の、僕らの目に映ったまま―――。











2.

      『 カリヨン 』



緩い下り坂、右カーヴ 宝石の洪水どこまで流れてゆこう

限りなく透明な夜明けとブルーのシヴォレー

貨物船が見えるカフェ 額縁のシルクスクリーン



モノクロの広告ボード 時間が凍った太陽

雨でぐしょぐしょの彼らはとても幸せそうだった、

イルミネーションの樹海で



 からだはからだを欲しがるけれど はだかのままじゃとても不安だよ

 すべてさらしてもあんな綺麗な メキシコユリの花になりたい



ローライズのジーンズからのぞくウエストには青空が映ってた

それが俺の胸にも像を結び カリヨンみたく共鳴するんだ



4階のアトリエの下には 醜くも美しくもない街

ブルーのシャッターと白い壁、赤いドア、まだ下描きの夕焼け、



 焦ってもどうにもなるもんか 静かにあなたが好きだから

 捨てる前の万年筆で描いたレンガの街へ

 アプリコット・ティー飲みに今度誘うから待っていろ












3.

           『 モーターグライダー 』



グラウンド、キャンパスのからっぽのグラウンド 5メートルの布に描いた絵をひろげ

「見てみたい景色を描いたの」と笑って とんでもなくエロティックな詩を暗誦した



hipの見えているカーゴパンツで芝生に座る そんなに自分をさらして怖くないのかなと思う

君に初めて会った、あのガラス張りの建物の中で 君にあふれてるドキドキを

ひとつずつ集めて

組み立てられた



みどりのハネ MOTERGLIDER いまFly away! MOTERGLIDER

絵のなかの理想郷を君は見にゆく、もっとドキドキする世界へ、Oh, year―







 乱気流に巻き込まれ 夕暮れの砂漠に不時着

 衝撃で割れた画材ケースの金具で腕を切った

 頭に巻いてたスカーフで、血の噴き出す腕を縛り

 ゆがんだドアを開け、君が見たのは、星になってしまったパパだった―。



そして襲いかかるスコール 「ただおめでたい夢を見ていただけね、

おねがい、もうこれ以上 わたしをみじめにしないで。」

翼たたく雨、夜の闇、痛み止め飲み込み、目を閉じた―。







夜明けの光で目が覚めた 血が止まった腕に、かすかに風を感じた



離陸のチャンスは一度だけ 雨で固くなった砂地が

再び乾いてしまう前―。祈りながら、かけるエンジン





回りだすプロペラ、雨上がりの香る風はなぜか パパの星とは逆向きに吹いている

今だけ走れる、土の―、



滑走路を、MOTERGLIDER 「行けっ! Fly again!」MOTERGLIDER

「さよならパパ、大丈夫、あなたが思うより、あたしフテブテしくなった。」

「傷は浅いんだ」MOTERGLIDER

Before the sun goes brighter― MOTERGLIDER

怖さを捨てた君が飛び去った砂漠、プロペラの音だけ響き渡って、Oh,year―



そして、

スコールの雨は地下を流れ、集まってオアシスになる

草木が芽吹き、迷子のフラミンゴや、はぐれたシマウマが住み着く

絵に描いた理想郷は、ほら、こんな砂漠の中に現れて、

いつか君がもう一度、ここを通りかかる、日をさぁ、ずっと、ずっと、ほら、今も―、

待っている―。











4.

       『 Rock'n'Rollin' Requiem 』



つけ過ぎの香水も、似合わないイエローブラウンのスーツも、

いま浮かぶ いつよりも美しく浮かぶのに。



ダブルをツインと間違えたフロントに ターミナル・ホテルのフロントに真顔で

『ねぇ、あたしらに離れて寝ろって言うの?』なんて

・・・言ってくれるぜ!



*氷河(グレイシャル)ブルーの吹雪の中を 赤いキャデラックは北へ

星か骨になった 貴女が眠る町へ

*repeat





黒い服なんて、白い十字架なんて、ガラじゃねえだろ?

クリスマス・キャロルみたく、鎖ひきずって夜中に出て来いよ。

ビリビリのジーンズで、大股ひらいて、うらみごとでもこぼせよ。

どんなクッダラネエ愚痴だって、ずっとずっと聞いていてやるよ。

ヘタッピなブリーチの髪をなでながら、夜明けまで聞いていてやるよ。



*repeat



 涙ひと粒もこぼさず、花を墓石に添えられたらさ、

 おれを強い男と 初めて認めてくれるかい?



おかあさんは大丈夫だよ おれが紅茶入れてあげたら 庭へ出て少し落ち着いてる。

「そうね、あの子なら今頃は、屋根にしがみついてでも

天国行きのバスに乗っているでしょう」

涙は見せないぜ、Rock'n'Rollin' Requiem

あのポルノなライターも、Rock'n'Rollin' Requiem

墓に添えたぜ Rock'n'Rollin' Requiem Rock'n'Rollin' Requiem...











5.

         『 最終回 』



すがって手に入れる愛は醜い

だからこれが最後 今度ダメならば、もう会いたいとか好きとか

冗談でも言わないぜ。





お前はきっと天性の詩人、お前のとっぴな言葉たちは

終わりのこないレコードになって、おれをぐるぐる巡り続けた。

お前は後ろ姿でさえ、人目をザザザザーッて動かすんだ

おれの胸にはハチミツが溢れ出したまま

星をつかむきもちで髪に手を伸ばした。



あこがれ、「大げさ」ってお前が笑うあこがれ

だって、「フツーだよ、ぜんぜんフツーじゃん」て言う、そのひとつひとつが

とくべつに強くおれをつかまえているのだから。



 God Only Knowz If itz HAPPiEND Or DEADEND―

 カッケぇお前の、手を、手を握ったなら

 God Only Knowz If itz HAPPiEND Or DEADEND―

 おれまでカッコよくなれるような気がしてたんだ

 錯覚でも、錯覚でも―、切実に、切実に―、Year―、







 ウソをつかない、感謝・優しさを忘れない、困っているヤツは助ける、

 でもそれには条件があるぜ。

 いちばん大事なひとりをきちんと愛せなければさ、

 ほかのどんな愛だって生まれやしないんだ。



 行かないで、行くな、この言葉が声になっちまう前に

 行かないで、行くな、まだ伝えてない想いがあるんだ。





 God Only Knowz If itz HAPPiEND Or DEADEND―

 気の強ぇお前の、髪を、そっと撫でたなら

 God Only Knowz If itz HAPPiEND Or DEADEND―

  おれにも魔法がかかるみたく信じてたんだ

  幻覚でも、幻覚でも―、それは鮮烈に、鮮烈に―、Year―。















▼読んでくれてありがとう。 小林文彩。▼